皆さんのコメントで気づきましたが、昨日(2013年1月8日)は大変な一日だったようです。
コメント返信より記事追加を優先しますので、返信はあとにさせてください。ごめんなさい。
1月8日午後、広島電鉄株式会社の臨時取締役会により、
越智秀信社長が解任されました。
タイムリーにも1月6日に書いた記事にある通り、越智社長は駅前大橋ルートについては「地下案以外にない」というほどの地下案推進派でした。
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広電駅前大橋ルート(25) - 1年間の経緯のまとめ。高架案は是か非か。取締役会では、新型車両の視察のために招集に応じなかったとされる越智氏を除く全取締役の全会一致により、越智氏の降格が決まりました。
プレスリリースによる降格理由は「
越智氏の独断的な業務執行により、会社組織としての正当な業務執行に支障をきたしているため、経営体制の刷新を図るものであります。」とのことでした。
→
広島電鉄 - 代表取締役の異動に関するお知らせ尋常ではない降格理由で、取締役会が全会一致したということに、越智氏が広電でも孤立していた状況が見えますが、その内情については日経新聞の記事が詳しく取り上げていました。
広電社長、事実上の解任 駅前大橋線で孤立か
日本経済新聞 2013/01/09 06:00 強調はめりみり
→元記事リンク広島電鉄は8日、越智秀信社長が取締役に降格し椋田昌夫専務が社長に昇格したと発表した。越智社長は就任から約2年半での交代となる。国土交通省出身の越智氏は大田哲哉元社長(故人)の遺志を引き継ぎ、最大の懸案であるJR広島駅前に直線で入る「駅前大橋線」の整備計画を推進していた。だが、車両の進入方法を巡り社内対立が表面化。越智氏は社内をまとめ切れなかったことが今回の突然の交代につながったとみられている。
社長交代は8日に開催した臨時取締役会で決定した。同日付で越智氏の事実上の解任を実施した。広電は発表文の異動の理由で「代表取締役の独断的な業務執行で会社組織の正当な業務執行に支障をきたしている」と、越智氏への不信感を表明した。
越智氏の解任は緊急動議ではなく、4日付の取締役会招集通知には「代表取締役の解職について」と記されていた。広電に近いある経営者は「越智氏は経営陣の中で孤立しており、社内でクーデターが起こりかねないと聞いていた」と話す。
越智氏は大田元社長が国交省から招いたが、社長に昇格する椋田氏も大田元社長の信頼が厚く、大田元社長は椋田氏が越智氏を支える経営体制を目指していた。椋田氏は鉄道、不動産、人事部門など幅広い分野を経験し社内外での人脈も広い。椋田氏の社長就任で、駅前大橋線など広電の経営方針が大きく転換する可能性がある。
越智氏が降格された今回の人事の直接の引き金となったとみられるのは、「駅前大橋線」の整備計画。現在、広島市中心部から遠回りして広島駅に入る路線を直線にして時間短縮を図る大事業だ。広島市の検討委員会は2010年から広電の乗り入れ方法を検討しており、高架方式と地下方式に絞り3月までに結論を出す予定だった。
越智氏は10年の社長就任当初から地下方式を主張。昨年末の日本経済新聞のインタビューでも、「高架方式は道路上に軌道を支える柱を設置するため駅前の交通が混雑する」と、地下方式のメリットを訴えていた。
だが、昨年12月の市の委員会では、複数の市議会議員が高架案を主張。広電の社内でも「事業費を抑えられる高架案が望ましい」とする意見も広がっていた。一方で、越智氏は「12年度中に基本方針を決めてもらわないと、予定している16年度末の完成に間に合わない」と焦りを募らせており、これが経営陣の中で孤立を招いた理由ともみられている。
広電は昨年、電車創業100周年を迎え、老朽化した路面電車の更新や古い車両を活用したレストランの開店などの記念事業を開催。「次の100年も市民に愛される企業にしたい」と話していた。記者会見を頻繁に開き、自ら事業について説明。メディアとのインタビューでも広報担当者を介さず単独で応じることが多く、「スタンドプレー的に見える部分があった」との指摘も多い。
また、NHKニュースでは、椋田新社長の記者会見が報道されています。
社長降格 “独善的”が理由
→元記事リンク・動画あり広島電鉄が越智秀信前社長を取締役に降格する決議を行ったことに伴い、新たに社長に就任した椋田昌夫氏が記者会見し、運賃や路線の整備などの重要な案件について越智前社長が取締役会を通さないまま自身の考えを公表し社内を混乱させたことが、降格の大きな理由だと説明しました。
広島電鉄は8日の臨時取締役会で越智秀信前社長を非常勤の取締役に降格させ、それに伴って新たに社長に就任した椋田昌夫氏が9日、広島市の本社で記者会見を開きました。
この中で椋田新社長は降格の理由について、「運賃の値上げや広島駅前を通る路線の再整備といった重要な計画に関連して、取締役会にかけられていない案を次々と公表した」と述べ、越智前社長の経営手法が独善的だったと批判しました。
そのうえで椋田新社長は、運賃の値上げと、広島駅前の路線の再整備について、いったん白紙に戻すなどして見直す考えを示しました。
会見の中では、椋田新社長が「
電車運賃改定事案、駅前通りの電車線路整備事案への対応が越智氏を降格した理由です」と明言し、「
社の重要な方針は取締役会へ通すようにお願いしたにもかかわらず、越智氏の私案か、会社の案かわからないことがどんどん発表されてしまった」と不満を見せていました。
この事実経過をみると、広電の社内で地下案反対派が地下案推進派の越智氏を追い落としたことになりました。
このため
地下案が消滅したと考えていいのではないでしょうか?
ようやく、「高架案は可能か不可能か」の押し問答から脱し、
広電高架・JR橋上駅・新駅ビルを含めた広島駅のあり方を考えるスタートラインに立てた、と思います。
なお、広島市議会の都市活力向上対策特別委員会(2012年12月20日開催分)で駅前大橋ルートについて議論されていました。
→
広島市議会 - 都市活力向上対策特別委員会この内容によると、広島市が出していた技術的検討業務の結果、
「地平案は電車を通すための信号時間を取れず技術的に不可能であるが、高架案・地下案はともに技術的に実現可能」との結果になり、このことを広電の参加する「広島駅南口広場再整備に関する連絡調整会議」(第4回・11月開催)にて報告し、広電も了解しているとのことです。
それ以来のここ数ヶ月、
越智氏は「技術的に高架は不可能」と言えなくなり、それでも地下案を推進するために様々な理由を取り上げていたのでしょう。
このことで越智氏の地下案推進は説得力を失いましたから、広電内部が利点が多い高架案に傾き、越智氏が追い落とされるのは無理もない話です。
また、この内容には別の気になる点がありました。
高架案については
・現在の広場に整備する案:駅前広場に入ってから
北へ曲がり、バスホーム上にホームを設ける案
・隣接地に拡張する案:現駅ビルの解体を前提にし、
現駅ビル敷地を含めて直線上のホームを整備する案
の2案を検討しているそうです。
つまり、広島市では私の検討案とは異なり、
道路を跨ぐ部分に分岐をつくらず、長スパンを複線分の橋桁とする案として検討しているようです。
また、エールエール地下広場部分を長スパンで飛ばすようなことはせず、地下広場内に数本(4本程度)の柱を落とす案としているようです。
この都市活力向上対策特別委員会については大変興味深い議論がされていますので、またまとめてみたいと思います。
(録音は約90分、紙資料非公開なので、まとめるのは随分時間のかかる作業になりそうです。いつになれば出来るやら。)
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- 2013/01/09(水) 23:30:47|
- 広電駅前大橋ルート
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もう年が明けてしばらくたってしまいましたが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
このブログは、
広島駅を中心とした開発が「一進一退」する中で、広島の将来像を自分なりに表現したいと思って始めたものでした。
初めての記事を書いたのは一昨年の12月ですが、メインの連載である「広電駅前大橋ルート」を書き始めたのは年が明けた1月で、それ以来の1年間、ずっと頭の片隅にこの駅前大橋ルートのことがありました。
(だから、他の開発計画をほっといて駅前大橋ルートのことばかり話していますね。)
昨年1年は、広島では様々な動きがありましたが、とりわけ広島駅周辺に関しては
広島駅在来線橋上駅舎・自由通路
広島駅前Bブロックの
2大案件が着工できたのが喜ばしいニュースでした。
さらに、Cブロックも着工を控えた状況ですし、紆余曲折があった二葉の里や高速5号線も将来像が見えるようになってきました。
さて、対照的に、平成23年度中、つまり昨年3月までに高架案・地平案・地下案のいずれかが決定するはずだった
広電駅前大橋ルートは、未だに何も決まっていません。私がここで「
高架案が技術的に見て最良の方法ではないか」と主張するようになったのは、3案が示された後、
独自の検証をし、ここで公開してきたからです。
その背景には、昨年元日の中国新聞Leaders倶楽部や、そのころ同紙に掲載された
広電・越智社長の主張が高架案を認めないものだったのに対し、高架案が本当に不可能か疑問を覚えたことがありました。
当時の越智社長の主張は、過去記事に引用していますが、それを再掲します。
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広電駅前大橋ルート(5) - 越智社長の指摘する「高架案の技術的問題」広島駅南の路面電車新路線「可能なのは地下案」
―広電社長インタビュー
2012/01/07 中国新聞掲載、強調はめりみりによるJR広島駅南口(広島市南区)に乗り入れる路面電車の新路線「駅前大橋線」の構造について、広島電鉄の越智秀信社長は中国新聞のインタビューで、「可能なのは地下案だけ」との見解を表明した。同社は独自に総事業費を約140億円と試算して上で、約1割を負担する考えがあることを明らかにした。
<中略>駅前大橋南側と南口広場の間を高架で結ぶ案は「急勾配で電車が上がれない。予定地の下には地下街があり重い高架を支え切れない」と説明。「現実に可能な選択肢は地下案しか無い。地下案でやるかやらないかだ」と述べた。
<中略>地下案は稲荷町交差点北側から地下に入り、南口広場の地下に新設する電停に乗り入れる
<中略>越智社長の見解について、市道路交通局の高井巌局長は「現段階では3案を平行して検討しており、絞るまでに至っていない」と述べた。市は総事業費を250億~300億円と見込み「広電の試算額では収まらない」としている。
これに対し、広電以外に地下案に賛同する意見は新聞紙上で取り上げられることはなく、広島市は中立(?)、JRは在来線橋上駅舎との一体整備ができることから高架案寄りという状況で、議論が膠着して決定の延期が繰り返されることが1年続きました。
さらに、3案のいずれにするかを決定するのは市でも事業者(広電)でもなく「広島駅南口広場の再整備に係る基本方針検討委員会」だったのですが、この委員会の構成員は技術者ではないので、「技術的に問題」と広電が主張する以上、彼らには決められなかったのでした。
結局、広島市は地下案・高架案の「技術的検討業務」を出すことになりました。
この業務が終わったのが10月末でしたが、これを踏まえた検討委員会は、年明けまでまだ開催されていません。
12がつになって、広電と検討委員会以外では駅前大橋ルートに関する動きがあり、
情勢は高架案優位になっていると見ますが、いかがでしょうか。
JRについては「高架案の場合、自由通路との連絡のためには駅ビル建て替えが不可欠、なので高架案が決定すれば建て替えを検討する」と表明して事実上高架案を推進しています。
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鯉党のひろしま街づくり日記 -- JR西、"高架"条件で駅ビル建て替えを検討!さらに、広島県警が「信号制御や交通渋滞の面から地平案は不可、他2案でも、比治山線は稲荷町から分岐するよう経路を変更するべき」としたことから、地平案は事実上なくなりました。
→
広電駅前大橋ルート(24) - 広電高架と広島駅新ビル に引用
ここでようやく、比治山線移設を前提として高架か地下か、という選択肢に絞られたのですが、
広電社長の主張は「地下しかない」ということで一貫しています。
ただ、「技術的に地下しか不可能だ」と言っていたのにもかかわらず、技術的検討業務が始まったあとは様々な別の理由を挙げているのは気になるところです。
(記事によって信号で渋滞を起こす、車線数が減る、などといろいろあるようです)
さてさて、今年も中国新聞Leaders倶楽部で広電・越智社長のロングインタビューが掲載されています。
駅前大橋ルートを中心に、読んでみましょう。
「超低床」導入進め利便性追求
広島電鉄 代表取締役社長 越智 秀信(おち ひでのぶ)氏
中国新聞 2013/01/01 別冊特集「中国新聞Leaders倶楽部」 一部抜粋
→元記事リンク
―電車開業100周年の2012年はどんな年でしたか。
原爆の大きな被害に遭ったことやマイカー時代の到来による利用者の激減など、さまざまな経験を積み重ねてきた中で、100周年は大きな節目でした。また同時に、通過点に過ぎないとも考えています。サービス向上を図るという意味では「次の100年」に向けた布石を打った1年だったとも言えます。
―JR広島駅南口(南区)に電車を乗り入れる「駅前大橋線」計画の進ちょく状況はいかがですか。
顧客ニーズを高めるためにも、速度アップは欠かせません。駅前大橋線が完成すれば、現在15分から25分かかる広島駅から紙屋町(中区)までが約9分で行き来できます。
広島駅南口の再開発が進めば、交通量は大幅に増えます。電車は路上を通しても、高架にしても車線に影響するので、地下を通すことが最善策です。地下ルートは、経費がかさむと言われていますが、当社の計算では、高架とほぼ変わりません。
「地下しかない、地下でやるかやらないか」と言い切っていた昨年に対し、「地下が最善」とトーンダウンしていますし、
「技術的に不可能」という主張は影もありませんね。
また、地下案と高架案の
建設費がほとんど変わらない根拠は、広島市や検討委員会に示せるのでしょうか。
これまでの広電の主張が適切かどうかは、今月、検討委員会が開かれ、技術的検討業務の結果が示されることでわかるでしょう。
仮に地下か高架か、いずれかが優位な結果が出たとして、これまでの経緯から、すんなりと事が進むように思えないのが参ったところですが。
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- 2013/01/06(日) 19:40:22|
- 広電駅前大橋ルート
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