*Hiroshima-Terminal* 広島駅と都市開発について考えてみます

大きく変化しつつある広島駅の計画を中心として、広島の街について考えてみたいと思います。

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白島新駅(2) - 設計変更の良し悪し

旬が過ぎた話題ではありますが、白島新駅(長寿園駅)の整備の遅れについて意見を書いていた以上、取り上げないわけにはいきません。

花と緑、白島新駅で新構想

2012/7/24 中国新聞より→中国新聞サイトへ

広島市は24日、JR山陽線とアストラムラインの結節点となる白島新駅(中区)の新たなデザインを公表した。JR駅とアストラムライン駅を結ぶ連絡通路の屋根を簡素化してコストを削減し、緑化などで「花と緑」というコンセプトを織り込む。事業費は約6億円減の約65億円になる見込みだ。

 当初のデザインは、アストラムライン駅と連絡通路を長さ131メートルの半筒形のコンクリート製屋根で一体的に覆っていた。新たなデザインはこの屋根を77メートルに短縮し、駅部分だけ覆う。連絡通路の屋根は人が通行する部分だけ設け、屋上に芝生などを植える。緑化は松井一実市長が進める「花と緑の広島づくり」を踏まえた。

 市は新しいデザインに基づき、来年初めから本体工事に入る予定で、15年春の開業を目指す。松井市長は24日の記者会見で「連絡通路では通路以外のスペースを花と緑の空間にしたい。維持管理は駅周辺の地域住民にもお手伝いいただきたい」と述べた。

120724_hakushimasta_minimized.png


この記事が縮小案についていち早く取り上げていましたが、広島市道路交通局による紹介ページもこの新しい案を元にした内容に更新されています。
広島市/白島新駅設置の取組状況
そのなかに、白島新駅の整備の遅れについて理由を解説した部分が加筆されていました。

白島新駅のデザイン見直し

1.デザイン見直しに至った理由

 白島新駅のデザインについては、平成22年度に実施したプロポーザルにより選定された設計者の提案を具体化するために、これまで、設計を進めてまいりました。

 しかしながら、連絡通路の施工時における山陽新幹線への影響等についてや火災時における新駅の排煙等の安全対策についての国との協議、また、プロポーザルにより選定した設計者の提案を実現しようとした場合、当初想定していた57億円の事業費が71億円と、14億円増加する見込みであることが明らかとなりました。

 平成23年4月以降、本市においては、限られた財源を有効に活用するという観点にたって、すべての事務事業の見直しを進めています。その中で、この白島新駅に係る計画についても、見直しを行っていくこととしたものです。

2.見直しにあたっての基本的考え方

 事業費縮減の観点はもとより、白島新駅が新たな交通結節点として都心エリアへの主要導線の一つとなり、多くの来訪者等の利用も見込まれる施設となることから、広島ならではの「おもてなしの心」を表現する場としても活用できるよう、「花と緑の広島づくり」の観点も踏まえ、見直しを行いました。

3.デザイン見直しの内容

(1) アストラムライン新駅本体については、当初計画どおりですが、事業費縮減の観点から、連絡通路部分の屋根を簡素な構造形態へ見直すこととし、ドーム状の屋根を取りやめて、歩行者の通行に必要な動線部分のみに屋根を設置します。

(2)「花と緑の広島づくり」の観点から、利用者の動線軸となる中央部の連絡通路において、快適な歩行空間づくりを目指し、地元関係者と協働して、花と緑にあふれる空間づくりに取り組みます。

 また、今回見直しを行った連絡通路の屋根については、国道横断部の連絡通路(2階レベル)から容易に視認できることから、中央部連絡通路全体として統一感のある空間を創出するため、屋根の緑化に取り組みます。



市による解説を見ても、設計変更の理由は予算超過への対応で、その予算超過の原因にはやはり「プロポーザルにより選定した設計者の提案を実現しようとした」こと、つまり、プロポーザルで選定されたシーラカンス案そのものが一般的な構造の駅舎に比べ高価な建設費になってしまったことが含まれていたとわかります。
そして、当初建設の遅れの原因として取り上げられていた「地盤強度の問題」は、この解説によると「施工時における山陽新幹線への影響」が主なものだったようです。


そして設計変更された案ですが、新聞記事にも市の解説にも出ているように「花と緑の広島づくり」をコンセプトとしてまとめられました。
元々のシーラカンス案は幅約20m、高さ約10m(?)のアーチヴォールトで作った下のイメージのような大空間が特徴でした。
120820_hakushimasta_old_innerview.jpg
この空間は中にいる人からはかなりの大きさが感じられる開放感のある空間ですが、一方ではスケールが大きいためにうまくデザインしなければ殺風景になりそうなところでした。
(そして、このイメージパースは、あっさりとした表現も相成ってですが、私には随分味気無い空間に見えます)
また、連絡通路・改札・ホームが一直線に見渡せる、空間の一体感が大きな特徴でした。

変更案では、通路部分のスケールが小さくなり、コンセプトでもある植樹や周囲の街の風景がよく見えるため、中に入ったときの味気なさは緩和されています。
一方で、改札やホームと連絡通路との間の見渡しがきかなくなったため、空間の一体感はなくなっています。むしろ、連絡通路にいる人の視野は「トンネル型駅舎」よりも周囲の街に向くでしょう。
また、元の案では一体の広場のような空間を形成していたのに対し、屋根の有無によって通路と屋外が明確に区分されてしまったことをどう評価するかは悩むところです。

こうしてみると、新しい設計案には良し悪しありますが、元のコンセプトと新しいコンセプトとをうまくまとめられた案なのではないかと思います。
白島新駅の整備が遅れてしまったことは非常に残念ですが、この案に決定したことで、以降の整備が順調に進むことを祈ります。
  1. 2012/08/20(月) 23:09:52|
  2. 白島新駅
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広電駅前大橋ルート(20) - 改めて、広電広島駅について考えてみます。

<8/1 8/6 追記あり>

長らくお休みしてすみません。
駅前大橋ルートについては、先月の記事で紹介した「技術的検討業務」が始まり、ついに本格的に動き出した感があります。

この「技術的検討業務」は7/2に開札があり、株式会社建設技術研究所さんが落札しています。
そろそろ、資料調査や基本的な検討を始めているころでしょうか。

ちなみに、この入札は下記のように、大手土木系コンサル4社が応じていました。
株式会社建設技術研究所 中国支社 ― 6,062,775円(決定くじ)
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 広島支店 ― 6,062,775円
復建調査設計株式会社 広島支社 ― 7,900,000円
パシフィックコンサルタンツ株式会社 中国支社 ― 8,784,000円


広電広島駅は(特に高架案の場合)広島駅とのASSEを介した接続をどのようにするかが重要な問題の一つになりますから、
ASSE(2000年の改修工事)や新自由通路の設計者であるJR西日本コンサルタンツさんが落札するといいのかなと思っていましたが、
同額のくじ引きで他のコンサルが落札した形になりました。
JR側は高架案推しという面があったことを考えると、中立的に評価してくれそうなのでこれはこれでいい気がします。


このブログでは駅前大橋ルートの技術的な検討や広電広島駅の設計案を公開してきました。
(まぁ、「業務」で行われるものとは比べるべくもない、甘々な素人検討ではありますが)
今回の「技術的検討業務」やいずれ行われるであろう実施設計では、ここに掲載してきた内容について私の権利を主張するつもりはありません。
むしろ、私案や私見が実際の駅前大橋ルート計画に影響を与えられたのだとしたら本望です。
(というより、私の書いてきたことがどれほど正確で、どれほど誤りか、ということが明らかになるのが楽しみです。)
ですから、これらの業務に携わる方に参考にしていただけたら、というつもりで書き進めます。
(ちなみに、やっぱりというか、建設技術研究所さんの社内からもこのブログを見られていました。)


さて、ここからが本題です。

この駅前大橋ルート、とくに広電広島駅がどうあるべきか、ということは、過去にもたびたび取り上げてきました。
(というより、このブログのメインテーマだったりしますね・(^o^;) )
とくに、約半年前には、高架案の広電広島駅についてプランA・プランBとして図面化していました。

高架案プランA・プランB

しかし、これを描いて以降もさらなる条件が明らかになってきたので、改めて整理し、図面化していきたいと思います。


<8/1 追記ここから>

明らかになった条件のうち、大きなものは広島市と広電への質問から浮かび上がった内容です。

広島市への質問と回答→記事
広電への質問と回答→記事

これらから浮かんできた条件は、
・電車の運行上、問題ない勾配の上限は45‰(旧型電車でも45‰までは走行可能)
・(広電曰く、)高架上に滞留スペースを広く取る必要が有るため、高架案では45‰の勾配に収まらない
というところでした。


他の条件としては、
・広電電車の荷重条件はアストラムラインなどの小型電車と同等なので、高架の構造や桁高も同等と考えられる→記事
・「広い高架構造」は、高架下が暗く見えることが避けられなさそう→上と同じ記事
・降車ホームはできる限りまとめ、「改札口」をつくったほうがよい→「プランA」に対するご意見
・電車が複雑に折り返す構造は分岐部分が長くなる上、運転に手間がかかり無駄が多い→「プランB」に対するご意見

といったところでしょうか。


<8/6 追記ここから>

というわけで、以前のプランAを基に、これらの条件を考慮した案を描いてみました。
プランAを利用したのは、広島市検討案とは全く異なる形状だったことと、プランBは無駄が多く難しいこととが理由です。
しかし、考えてみると、もとのプランAとはかなり違うものになりました。

120806_viaductplan_c.png

プランAとどう変えたのか、ということを中心に新しいプランCの特徴を書きますと、

・JRとの連絡通路の出口に30m×25mの立体噴水広場を計画
 →広島人にはお馴染みの「噴水広場」を継承して、プランAに滞留スペースが無いことを解消した。
・降車ホームを(できる限り)車外改札に
 →メインの降車ホーム(a・b)を車外改札としたことで、折り返し時間を短縮。比治山線用のc・混雑時用のdは状況に応じて車内改札と「出口の係員」で対応。
・高架橋の高さはASSEの3階に合わせる
 →現在の駅ビルASSEを利用することが前提になるため、広電の駅はASSEに合わせることでできるだけスムーズな動線を計画。同時に、駅前交差点の有効高も確保できる。
・高架橋が1階広場と重なる部分に、複数箇所の吹抜をとる
 →高架下は暗くなりがちなので、「立体噴水」を含めて複数の吹抜をとって影響を緩和。あるいは高架下を商業施設化することも考えられる。
・ホーム部分の高架橋は立体トラスで構成
 →広場や通路を確保したため、ホームの大半が道路上へ。道路上の長スパンが幅広の高架になってしまうため、この部分は立体トラスとして構造を成立させる。

と、こんな具合でしょうか。
  1. 2012/07/24(火) 23:52:55|
  2. 広電駅前大橋ルート
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白島新駅(1) - 白島新駅の工期延期・予算超過は「斬新な」設計案が一因??

今更感のある話題ですが、白島新駅の完成延期問題について取り上げてみます。

まず、白島新駅とはなんなのかについては、下記を参照いただくとして。
白島新駅 - Wikipedia
広島市/白島新駅の取組状況

白島新駅は、アストラムラインとJRの交点になる白島北町に、両線の乗換駅となる駅を設置する計画で、2014年春の完成を目指し、設計案(意匠設計者・詳細設計者)の決定までは順調に進んでいました。
しかし、着工寸前の2月初旬、
「追加の地盤工事が発生した」という理由で工期が1年延長され、
「地盤工事費用を捻出するため」という理由で連絡通路が簡素化されることになりました。
この件を載せた中国新聞の記事は過去記事(「広電駅前大橋ルート(14) - 白島新駅の記事から、ルート決定と地盤の話」)に全文転載しています。

これは非常に残念な出来事でしたが完成延期の理由は致し方ないもので、また、地盤が関係する工期延長はよくあることでもありました。
このあと3ヶ月以上して、5月24日の広島経済レポートに気になる記事が出てきました。

120523hakushima-newsta.jpg

白島新駅、連絡通路デザイン見直し-設計2者に修正設計を委託:広島市

-前略-
アストラム白島新駅は、プラットホームが地下、改札口を含むコンコースが地上となる半地下構造。新駅と国道54号線の中央部に設ける連絡通路(延長約51m)を一体構造で大小の穴の開いたコンクリートシェル(約150m)で覆い、内部を吹き抜けの大空間としたデザインが特徴。当初は新駅と連絡通路は別々の構造とし、連絡通路は通行機能だけの幅6.5mの簡易な屋根をかけた構造だった。しかし、基本設計で新駅と連絡通路を一体構造とする案を採用したため、連絡通路を最大幅20mまで広げる建設費に加え、これまでの調査で必要となった地盤補強対策や駅の排煙対策の費用がかさみ、約57億円を見込んだ概算の総事業費(JR新駅を含む)は約71億円に膨らんだ。このため連絡通路のデザインを一部見直し、通行部分(幅6.5×延長51m)だけシェルで覆うスリムな形に修正する。
-中略-
市は今後、JR新駅を含む総事業費を6億円程度圧縮し、約65億円に抑える考えだ。



ということで、どうやら、完成延期や予算超過の理由は地盤の問題だけではなく、設計案の問題が含まれることが明らかになったようです。

120623hakushima-coelacanth.png

プロポーザルで意匠設計者に選定されたシーラカンスアンドアソシエイツの案(以下、シーラカンス案)はトンネル状のシェルで連絡通路と地下駅をまるごと覆うことが大きな特徴でした。
しかし、この案は上の比較画像にあげたとおり、連絡通路の規模が大きなものとなる上、屋根も(通常の連絡通路に比較すれば)巨大なものとなるため、建設費が高騰する要因になったようです。

(私も傍聴した公開プレゼンテーションでは「特異な構造であるため建設が困難で建設費がかかるではないのか」というように、まさにこの点を指摘された覚えがありますが、議事録の残っていないものですので、あくまでも私のひとりごとにとどめます。)

そして、地盤の問題と連絡通路(の屋根)の規模が過大だったことによって建設費が吊り上がり、設計変更を余儀なくされたため白島新駅の完成が延期された、ということのようです。
さらに、この特異な屋根のせいで排煙に問題が出たらしいのですが、ぱっと見たところ天井高が高い上に開放部分が多い(シェルに空けられた穴はガラスのあるものとないものとを作るそうで。)ので一般の建築物に比べて排煙は有利にみえるので、どういう意味なのかは新聞記事に出る情報ではなんとも言えません。

連絡通路の屋根の規模が過大だったことが建設費高騰の一因だったとはいえ、この「過大な屋根」こそがシーラカンス案の最大の特徴で売りだったわけですから、設計変更するくらいなら他の案(コンパクトで無理のないワークヴィジョンズ案や坂茂案)を選べよ、と言いたくなりますが間違いなくそうはできませんね。
(そして、設計プロポーザルを行った施設が、現実的な条件を加味した結果、プロポーザル案と全く違う建築物となって竣工するのは建築の世界ではよくあるコトだったりします。)

プロポーザルでは現実の建設費は半ば度外視され、設計案自体の評価によって決まる面がありますから、税金によって整備される公共施設のプロポーザルは建設費高騰を招き、税金の無駄遣いと非難されかねないわけです。
この白島新駅でも、建設費が57億円から65億円へ上がってしまいました。

一方、このようなプロポーザルでできた公共建築は建設費が高騰したとしてもそれ以上の評価が得られることも往々にあります。
一番極端な例はシドニーのオペラハウスでしょうけれど、広島では基町高校を県内一の進学校に押し上げたと言われる校舎(原広司)や、矢野ニュータウンの人気の一因と言われている矢野南小学校(象設計集団)のような事例もあります。

だから、白島新駅の設計案の"欠陥"が整備の遅れの原因となったことがもどかしい反面、これが完成してみてどのように評価されるかを待つまで、迂闊に"断罪"できないなという思いもあるのです。


設計変更する連絡通路ですが、広島経済レポートにある「通行部分(幅6.5×延長51m)だけシェルで覆うスリムな形」とは一体何なのでしょうか。
シーラカンス案の「シェル」はコンクリートでトンネル状の構造物を作ったものなのですが、構造自体はアーチ構造と同様に両端が固定された曲線型をした断面全体で荷重を負担するのですから、「シェル構造で通行部分だけを覆う」と、幅を狭くした分高さも低くなる圧迫感のある形状か、現在の断面形状の一部のみを残した構造的に破綻した形状か、何れにしてもかなり無理がある形状になります。
シーラカンス案はあの大きさのシェルが作られることで初めて構造的にも空間的にも成立するので、この難条件を彼らがどのように解決するか、純粋に興味があります。



ちなみに、
白島新駅の一部であるJRの駅については「白島駅」として認可が降りているそうです。
このままでは、全く別の場所にある 広電「白島駅」、 アストラムライン「白島駅」 と紛らわしいので、開業までにはこれらの駅名を整理しなければなりません。
(昔からある広電はともかくとして、後からできたアストラムやJRの駅が「白島駅」を名乗るのは不可解なことだとおもいますが。)

私の個人的な意見としては、
現・アストラム白島駅→「白島北町駅」(JRの駅名が変更不可なら「長寿園駅」)
仮・白島新駅→「長寿園駅」(JRの駅名が変更不可なら「白島駅」)
現・広電白島駅→そのまま「白島駅」(JRの駅名が変更不可なら「東白島駅」)
とするのがすっきりすると思うのですが。

「長寿園」は現在は団地の固有名詞のように思われてしまっていますが、明治時代の桜並木に由来するれっきとした「地名」で、現在も団地名や白島新駅の入口となる(!!)交差点名につかわれて定着していますから、この場所を示す駅名に使用するにふさわしいのではないのでしょうか。
それに、「長寿園駅」とは縁起がよさそうですね。きっぷがおみやげになりそうです(^-^*)
  1. 2012/06/24(日) 00:08:16|
  2. 白島新駅
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広電駅前大橋ルート(19) - 「路面電車の駅前大橋ルートに係る技術的検討業務」がついに開始

*まずはいつもあてにならない(^-^;)予告から*

本業のほうが多忙な時期に入ってしまい、このブログはまた休業してしまっていましたが、その間に色々な動きがありましたので、追って取り上げて行きたいと思います。

■広島駅自由通路(橋上駅)着工
■白島新駅設計不良(予算オーバー)の発覚
■B・Cブロック事業計画確定



*では本題*

ふがじんさんのTwitter(@fugajin)からの情報で気づいたのですが、
広島市の調達情報に今日(2012/06/15)付けの入札情報として、
「路面電車の駅前大橋ルートに係る技術的検討業務」
なるものが記載されています。
(詳細は広島市調達情報公開システムより、検索することで誰でも見ることができます。)


では、内容を具体的に確かめてみましょう。
まず、公告によると、
本業務は、路面電車の駅前大橋ルート(稲荷町交差点から駅前大橋を経由し、広島駅に至るルート)について、技術的な実現可能性を検証するため、高架案及び地下案の構造検討を行うものである。
と、いうことで、高架案・地下案いずれについても実際の工事を前提とした構造の検討を行うことになっています。

つまり、この業務によって私がさんざん議論の対象にしていた、
地下案は構造的に現実的なものなのかどうか、
高架案はどのような構造によって実現できるのか、
という2点がようやく明確になるわけです。
(地平案がないのは、信号や駅前広場の面積の都合であまり現実的でないため検討しないというよりは、駅前大橋が既に路面電車の荷重を考慮しているなどの理由で、土木技術的には検討の必要がないほど容易、というところでしょうか)


さらに詳細の内容は、「特記仕様書(検討業務編)」に文章で説明されていますが、

(1) 路面電車高架案の検討

路面電車の高架案は、駅前大橋の一部を改良し、路面電車軌道桁を整備するとともに、駅前広場に高架で進入する案である。

ア 駅前大橋の構造

・駅前大橋軌道桁について、設計計算及び断面検討を行う。
この結果を踏まえ、駅前大橋の下部工及び基礎工の耐力照査を行う。

イ 駅前大橋北詰~広島駅部区間の構造

・駅前大橋北詰~城北通りの標準桁について、設計計算及び断面検討を行う。
この結果を踏まえ、駅前大橋北詰~城北通りの下部工・基礎工について、設計計算及び断面検討を行う。
・城北通り跨線部~広島駅部区間の構造物については、類似事例から部材を想定する。
この結果を踏まえ、城北通り跨線部及び広島駅部の下部工について、照査(地震時の検討)を行う。
・以上の結果を踏まえ、南口地下広場の耐力照査を行う。

ウ 橋梁一般図作成

・高架案の橋長、支間割りを行い、橋梁形式を選定する。

エ その他

・上記ウを基に、概算工事費を算出する。
・広島駅部の橋りょうについては、広島の玄関口であることから、デザインについても景観性に配慮すること。
・騒音等の環境への影響を検討し、必要に応じて対策案を検討する。

(2) 路面電車地下案の検討

路面電車の地下案は、開削工法での整備を考えており、開削トンネルを前提とした一般図を作成するとともに概算工事費を算出する。また、地下広場躯体への影響や施工方法等を検証する。

とのことで、両案共に、現実の工事を前提とした内容で
構造を検討し、図面を作成し、概算工事費を算出する
ものになっています。

とくに高架案が詳しく記載されているのは、既存道路橋から取り付けられること、既存地下空間の上に建設されること、路面電車の終点駅を含むことなど一般的な高架橋と異なる点が多いからだろうと推測します。
しかしその一方で「広島の玄関口であることから、デザインについても景観性に配慮すること」の一文のように、広島市では高架案のほうがよいと考え、その弱点を克服しようと考えられているのではないかと思いたくなる部分があります。
(地下案については、地上からの掘割も、川の下を潜ることも、既存地下空間の下を通ることも、地下鉄工事ではよくある条件でしょうから多くを語るまでもないとは言えるはずですが。)


そして、「委託業務設計書」としてこの業務内容を細分した項目が記載されているのですが、

【路面電車高架案】

・駅前大橋軌道桁検討
・駅前大橋下部工耐力検討
・駅前大橋基礎工耐力検討
・広島駅部標準桁及び下部工・基礎工検討
・南口地下広場耐力照査(その1)
・南口地下広場耐力照査(その2)
・橋梁一般図作成及び概算工事費算出

【路面電車地下案】

・地下案一般図作成及び概算工事費算出
・地下広場躯体影響検討


ということで、技術的に大きな問題となる駅前大橋・既存地下広場への影響について検討することが必要されています。
これらの検討は資料として提供される駅前大橋・既存地下広場の構造計算書を使用するようです。
(これらを検討するのは当然必要なことですが、重要なことにもかかわらず検討されていなかったことでした。)


このような検討がないと、そもそも高架案・地下案が実現できるかどうかを判断できないわけで、今から検討するのはあまりにも遅いのではないか、と思うところですが、
とにかく、これまで混迷し続けていた駅前大橋ルートの建設が、ようやく現実化してきた、と歓迎いたします。


それにしても、この業務の完了日が10月末なんてことは、やっぱり今年夏に決定するのも不可能なんだって決定しましたね。
これも予想通り、というほかありませんが、この調子なら着工はいつになることやら………
  1. 2012/06/16(土) 00:10:47|
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広電駅前大橋ルート(18) - 景観に配慮した高架駅のつくりかた

前回に引き続き、高架についての話をします。
前回記事では、アストラムラインの高架を参考にして高架構造について分析してみましたが、アストラムの高架の構造、とくに桁高を決める上では重要な荷重の条件を広電に当てはめられるのか?、という問題がありました。
(前回記事へ きゆう さんが「路面電車の場合は高架にかかる負担が新交通よりも軽く済む・・・はず(?)だと思う」とコメントされていました。)

それに対し、私は以下のようにお返事しました。

それと、路面電車のほうがアストラムや日暮里・舎人ライナーより軽いのではないか、と言うことについては、路面電車では複数の電車が間隔を詰めて走ることがよくありますので、1スパンに掛かる荷重では大差ないのではないか、と考えることもできます。

アストラムの電車は1両約10.5tあるそうなので 10.5t/8m=1.3t/m となりますが、
(参照:http://astramline.co.jp/HRT1000.pdf
グリーンムーバーは1編成33.9tありますので 33.9t/30m=1.1t/m となり、アストラムよりやや軽い程度です。
旧型の電車(例・700型)では、13.5mの電車が20.0tだということで、 20.0t/13.5m=1.5t/m とアストラムより重くなります。
(もちろん、電車は厳密には等分布荷重ではありませんが、簡単に比較するために等分布のように考えて略算しています。また、この比較では乗客の重さは含んでいません。)

結局、アストラムと同等の荷重条件で高架を考えればよさそうです。


ということで、広電高架はアストラムや東京にある日暮里・舎人ライナーと同条件になりそうだと試算しました。

ここで、「日暮里・舎人ライナー」が登場したのは、きゆうさんから、軽快な高架橋の例として日本土木工業協会の紹介記事を紹介いただいたからです。
120513_dobokukyoukai.jpg
(C)2006 平野暉雄/社団法人日本土木工業協会

この高架橋について設計指導を担当なさった篠原修先生(東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授)は、高架橋と景観について以下のように述べていらっしゃいます。

のんべんだらりと続く高架橋は、デザインの対象として最もやっかいな部類に属する。どこまでも延びていくので形としてまとめにくい。これが一つ。
大抵はさほど広くない街路にはめ込もうとするので、きゅうくつになり圧迫感を生ずる。これが二つ。
交差点を飛ぶところでは大スパンとなり、また右折レーンなどの影響もあって橋脚がすっきりと立たない。つまり不連続となる。三つ目。
特にボリュームが大きくなる中空の駅舎をどうおさめるか。四つ目。
数え上げていけばきりがない。


このご意見には、皆さん納得なさるのではないでしょうか。
「三つ目」「四つ目」については、前回取り上げたアストラムの写真が物語っています。
120430astram-2ss.jpg120430astram-3ss.jpg

先に取り上げた写真を見る限りでは、これに対する回答として、
・橋桁の幅を最小限にし、薄いスラブが持ちだされた形態にすることで量感を抑える
・シンプルな形態で、橋桁との視覚的連続性のある橋脚
ということを考えてデザインされたものということのようです。
なお、先の写真では高架橋が全体に透け、光を通していますが、工事中でスラブを作っていない(PC板を張っていない?)ためにこのようになっているだけのようです。
(写真と同じ場所のストリートビューで、完成後の様子を確認できます。)

たとえば、「三つ目」の交差点付近、右折レーンを回避する箇所についても、アストラムラインのように大きな梁が出ることを避けたデザインをされています。
120513_googlesv.jpg
(googleストリートビューより)


別の参考例として、岡山駅西口にできた高架タクシー乗り場を取り上げます。

タクシー乗り場と広電高架は荷重条件が違う(タクシー乗り場のほうが軽い)と予想されますが、広電高架駅と同様に比較的低い高さに平面的に広がる高架であるため、圧迫感が出てしまいかねません。
大きな構造物を街に調和させながら、内部の圧迫感をどのように軽減するか、という点に着目してご覧ください。

120513okayamasta-1.jpg
外見では、木ルーバーを表面に出すことで、コンクリートの高架を直接意識させないようにしてあります。
しかし、高架下が暗く見えることは避けられなかったようです。

120513okayamasta-2.jpg
高架下に入ると、外からみた印象よりはずいぶん明るい空間で、照明に加え、数か所の吹き抜けから採光されています。
また、高架下にはいっても天井部分は梁やスラブを直接見せないようにアルミルーバーやパネルが張られています。

120513okayamasta-3.jpg
吹き抜けのうちのひとつは、2階(駅・自由通路・タクシー乗り場のレベル)へ上がる竪穴として取られ、高架下への採光のためにエスカレータの上部が全面ガラス張りの天窓になっていることがわかります。

120513okayamasta-4.jpg
中心の車路の部分にも大きな吹き抜けが取られていて、ここからも光が入ります。
構造的なスパンとは関係なく、機能面から吹き抜けの位置が決まったように見えます。
(もっとも、この高架は正確なグリッド構造ではないようなのですが。)

120513okayamasta-5.jpg
上階のタクシー乗り場は木で仕上げられた開放感のある屋根で覆われています。
人の通行量に比べてかなり広い広場空間が取られていますが、広電高架駅でもホーム前にこの程度の広場(人溜まり)が必要かもしれません。
  1. 2012/05/13(日) 23:26:26|
  2. 広電駅前大橋ルート
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プロフィール

めりみり

Author:めりみり
広島に暮らす、建築設計屋さんの下っ端です。
技術職の端くれとして奮闘しながら、
頭の片隅でひとり温めていた「街づくりの話」を書きだしてみます。

ご意見、ご質問はどなたでもお気軽に書いてください。
ご指導も、ご指摘もぜひぜひよろしくお願いいたします。

コメントには書きづらい話題がある、めりみりと個人的に情報交換したい、などという場合は、「非公開コメント」を活用ください。
非公開コメントには原則としてメールでお返事させていただいています。

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報告をいただければ大変嬉しいです。

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